ドリー夢小説 欲しいのは君だけ

「いらっしゃいませ〜!・・・・・周助君っ!?どうしたの、こんなところに来て」
商店街の中に周りとは違う雰囲気を漂わす喫茶SINAMONがある。
店内はカウンターを入れて50席しかなく、照明もそれなりに暗かった。
だが、マスターは変わったもので理解してくれるお客が来てくれるのならそれで良いと落ち着いる。
SINAMONの出入り口は、ベル付きのドアで開けたり閉めたりすると鳴るようになっていた。
ここで、アルバイトをしているは一日に数回しか聞かない音色に、厨房から駆け出し前まで来ると業務用の笑顔を曇らせる。
ドアから顔を出したのはご近所様で幼馴染である不二周助だった。
彼は水色のトレーナーとジーパンと言うラフな格好でこちらをお得意の笑顔をこちらに向けている。
さんがここでバイトしてるって姉さんから聞いたから来たんだ。カウンター、座って良いかな?」
そう、がらがらに空いているカウンターを指す。
彼を案内すると、真向かいの厨房から水を出した。
彼女は講義がない時や土日を見計らってSINAMONに入っている。
バイトは少なく、を入れて三人しかいなく、忙しい時などほとんどないので合う日がほとんどないのでお互いの名前を覚えてはいなかった。
周助は彼女が五年前お世話になっていた青学の生徒である。
彼は当時でも有名だった男子テニス部に所属していた。
しかし、この前卒業式があり、周助は高等部へ進学するらしい。
彼女も今年になれば就職活動などで忙しくなる。
「じゃあ、ホットのカプチーノくれるかな?」
「ホットカプチーノ、一つですね?かしこ参りました」
注文を受け、後ろの棚に手を伸ばしカップを取り出した。
これまでは無事に、エスカレーター式に上り詰めたが、今後はどうなるかは解らない。
作業をする彼女の後ろ姿を彼がニコニコと、見つめているのに気づかなかった。
この不況で、更にそれが難しくなったらしいが、弱音を吐いてばかりではいけない。
「ねぇ、マスターさんは?」
お待たせしましたと、周助の前に置くとそんなことを聞いてきた。
「マスターは、今、お得意様の所にコーヒーを出前に行っているの」
「へぇ。ここってそんなことしてくれるんだ?」
出来たてで白い湯気を立てているカプチーノに息を吹きかけると、一口飲む。
「うん。美味しいよ。さん、コーヒー淹れるの慣れてるね」
「ありがとう。私、ここでのバイト、長いから慣れてきたのね。始めの頃は、中々、マスターが触らせてくれなくてね。でも、一年半ぐらい経ってからかな?特訓が受けられるようになって必死で覚えたんだ。良かったぁ、周助君に美味しいって言ってもらえて」
今度は、業務用とは違った笑顔を彼に見せた。
これが普段の彼女が周助や周囲の人たちを明るくする笑顔である。
すると、彼はすっと立ち上がった。
「どうしたの?」
ちょうど肩の上まで伸びた髪が首をかしげると同時にゆれる。
それにより露になった耳には小さな穴が一つ空いていた。
さん。僕、カプチーノじゃなくて他に欲しいものがあって来たんだ」
「何かしら?」
そう、優しく笑う彼女の顎をいきなり掴む。
「周助君っ!?何をするの・・・・人が・・・・」
「今、誰もいないよ。・・・・僕ら、二人だけ・・・・」
そう、優しく笑った余り開かない黒っぽい瞳が反射で青く見えた。
それに思わず見惚れていると、彼が更に顔を近づけてくる。
「なっ!?」
「そんな顔しないでよ。それ以上したくなっちゃうじゃない」
くすっと、微笑みの唇を吸った。
「んっ!?」
余りの出来事に瞳を見開くと、周助がこちらを見ていることに気がつく。
それがどこまでも優しいものに感じられ瞼を閉じた。
彼と知り合ったのは、不二家の真向かいの家に引っ越してきた中学二年からだ。
当時は笑うことも出来なかったが、彼につられて笑うようになっていた。
あの頃は、周助の姉しかいなかった友達が今では沢山いる。
全て彼のおかげだと、振り返ると少年から男性に変貌している彼にドキドキしていた。
「私・・・・・周助君に恋してるの?」
そう自分自身に問いただしてみると正直なもので胸が熱くなる。
大学に上がったことを期に長かった髪を切り、耳にピアスをし始めた。
それから高校では決して手を伸ばさなかった喫茶店と言う接客業をバイトに選んだのだ。
しかし、余り客足がない場所を選んだのは、まだまだその気持ちが抜けていないと言うことである。

彼から唇が名残惜しそうにゆっくりと離れた。
「僕の気持ち、・・・・解ってくれた?」
そういって、まだ瞳を閉じている彼女の右瞼に口付けをする。
「周助君・・・・・。私もあなたが好きだった!」
そう言ったの目から涙が零れた。
彼の指がそれを優しく拭うけれど、止まることの知らないように頬を伝う。
カウンターと厨房の距離が憎かった。
それさえなければ、今ここで自分の方から抱きしめるのに・・・・。
「そんなに泣かないでよ。僕、どうすれば良いの?君がまた笑ってくれるのなら、僕はなんでもする。だから、何か言ってよ」
顔を手で覆う彼女の耳元に囁く。
指の間がしっかり閉まっていて中にいるの顔は、ふるふると震える眉毛しか見えなかった。
「周助君・・・・」
「何?」
やっと口を開いた彼女は彼の名を呼ぶ。
それに対して周助はいつもと変わらない穏やかな声で答えた。
「こっちに・・・・厨房に来て・・・・・」
そういうと、覆っていた掌をゆっくりと下ろした。
まだ、涙が瞳から溢れているが、表情には笑顔がある。
それを見ると、うんと、言う彼の姿がにじんで見えた。
「じゃあ、ちょっと、そこをどいていてくれるかな?」
テーブルの上で白い湯気を立てるカプチーノを隅に寄せる。
「よっと・・・・、着地成功。僕って、スーパーマンみたい?」
不安に思いながら素直に奥まで下がると、彼がカウンターを飛び越えてきた。
「もう、どうしていつもそんなに危ないことをするの!?私が引っ越してきたばかりの頃だっていじめられていた時に必死で立ち向かって。あの時、まだ小学三年生だったのよ?それなのに、私のことを必死に守ってくれて・・・・・・私、あなたが死んじゃうんじゃないかって思ったんだからっ!!」
馬鹿馬鹿と振り上げた握り拳は宙で止まり、力なく体の横に下ろし力を強く握り締める。
周助はまた両手で顔を覆う前に、彼女の元に歩み寄り抱きしめた。
「ごめんね・・・・さんを守りたかったんだ。年下だからって解っていても僕は大事なひと女を自分の手で守りたかったんだ」
「っ!?あの時より前から・・・・・・私のことを・・・?」
見上げた顔は何よりも切なそうな顔でこくりと頷く。
「一目惚れだった。・・・どうして、あんなに寂しそうな顔をしているのかって気になっちゃって・・・・・。友達から好きな子の話を聞いた時に気づいたんだ。これが恋なんだって」
彼女の目に掛かりそうな髪を長い指で後頭部へと動かした。
「やっと・・・・、僕に気がついてくれたね」
「ごめんね。私、気がつかないで・・・・」
彼の胸に顔を埋める。
ずっと、この場所に来たかった。
それが、今、力強く抱きしめてくれる。
さん・・・・。僕を見て・・・・」
そう、甘く呟く。
彼女の額に後が残るくらいキスをした。
「・・・・・・・『』で良い」
微かに動く唇を再び、奪う。

「他にいるものがある?私、奢るよ」
長い口付けが終わると、そう彼女がいつものように笑った。
周助はくすっと、いつものように笑い、こう言う。
「せっかくだけど、何も要らない。・・・・・・欲しいのはだけだから・・・・・」

―――・・・終わり・・・―――

♯後書き♯
皆様、こんにちは。
柊沢歌穂と申します。
この度は、「青学ファンクラブ様入会記念」というわけではありませんが、恐れながら自サイトにupしていますこの作品を送らせて頂きました。
この作品は、私がDream小説を書き始めた頃の作品ですが、お読みになられた皆様の感想は如何でしょうか?
私の書く作品は、こちらをお読みになられますとわかるかと思いますが、シリアスで甘々な路線だと考えています。
このようなもので宜しければ、一時の夢をご覧下さい。
それでは、簡潔ですが、ここで失礼しました。
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